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日雇いパンダと極楽の孔

同情するなら笹をくれ

帰省した話





昨日の夕方ごろに鈍行を乗り継ぎ乗り継ぎ、帰省した。


タケノコの炊き込みご飯のおにぎりを電車で三つほどバクバク食べて、くるまれてたラップ全てを座席の下に捨てるおじいさんがいた。


僕はヒーローだから、そのおじいさんの頭をピコピコハンマーで引っ叩いて、床に這いつくばらせてラップを拾わせた。


だってこんなおじいさんに限って最近の若者はクソだって喚くんでしょ?僕はいいけど僕を応援してくれているティーンに申し訳が立たない。


ごめん嘘です、睨むくらいしかできませんでした、情けない。


なんで僕がおじいさんの代わりに罪悪感を背負わなきゃいけないんだ。


本当のヒーローは幻の類いですか?


世界がどよめけばいいと思うんだよ水流のロック。




電車に6時間ほど揺られ、実家の最寄り駅に到着。


山奥の生まれなので、最寄り駅といっても実家から車で20分くらいの駅である。


シルバーのプリウスに乗り込むとオヤジが第一声「あれ、痩せた?」


モテるおじさんか。


普段はお父さんって呼んでます。




腹が減っていることを告げると、もうちょい早く言えよと怒られたが、イタリアントマトに連れていってくれた。


すかさず店員の今はケーキのテイクアウトしかやってません発言。


しょっぱいものがいいと言おうとしたが、誰も得しないのでやめた。


そしたらすかさず「一応買って帰ろう、家に肉じゃがあるよ」と言われたので、どうやら僕はしょっぱいものを食べたくて仕方がない顔をしていたらしい。




一ヶ月前に妹が一人暮らしデビューを済ませたせいで子どもロスになっているのか、今まで帰省したときのどの両親よりも優しかった。


おふくろにも「痩せた?」と言われた。


実際ちょっと痩せたのだが、「いや?むしろちょっと太ったと思うけどね?」と答えておいた。


あたしはこんなもんじゃないんだから!もっともっと可愛くなれるんだから!夏にはとびきりのビキニ着て結果にコミットしちゃうんだから!という感じだ。


ニコニコしながらかぼちゃプリンと肉じゃがを食べた。


普段はお母さんって呼んでます。




普段は友達と遊ぶついでにとか、地元で短期のバイトをやるからとか、帰省自体がおまけになることが多かった。


だが、今回の帰省の目的は、帰省することそのもの。


家に着いて、おじいちゃんおばあちゃんを含めた四人に顔を見せた段階で、やることがなくなった。


親不孝者だと思われるかもしれないが、本当に親に話すことがない。


まさか出会い系アプリで宗教勧誘に引っかかった鉄板トークをするわけにもいかない。


幸い、近況を色々と聞いてくれたので話はある程度弾んだ。


さすが僕の親、引き出し上手だ。




そんなこんなで、帰る時間になった。


それからは、そんなこんなで片付いてしまうくらい何もなかった。


僕の家族は、僕を含めてみなアフリカのおじいさんみたいな時間感覚で生きているので、一日そこらで面白いことは起きないのだ。


しいて言えばおふくろと一緒にオヤジの寝言で遊んだことと、ルモシティでスコアを競いあったことくらいだろうか。


割愛。




帰り際、おばあちゃんが裸の千円札10枚で一万円をくれた。


おばあちゃん!ダメ!


僕にこんな大金をポンと渡すとアダルトグッズ買いたくなるんだからダメだって!おばあちゃん!ダメ!もしもし!?それダメだから!


最近はローションを贅沢に使ってるもんだから、まずはローションを買わせてもらうね、ありがとうおばあちゃん!


一万円を受け取ると、矢継ぎ早に「元気でおられか」って言われた。


こっちのセリフじゃい!ワシ以上に健康に気を遣わんかい!ってのを要約して、「…うん」と言っておいた。


いま、高速バスの中でこれを書いているが、おじいちゃんに「…うん」と言うのを忘れちゃったのが心残りである。




次の帰省はおそらく8月。


4ヶ月寝かせた僕の「…うん」は重いぞー、食らっちゃうぞー。


ありがとう、それまでにローションの違いの分かる男になっておくね。




(Aパターン)