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日雇いパンダと極楽の孔

同情するなら笹をくれ

そのショートケーキはズルい






先週、某大手コンビニチェーンでアルバイトを始めた。


今日の昼も目まぐるしく出入りする客が研修中の僕を翻弄した。


日本にもう一度バブルが来ているのかというくらいに、みんなアホみたいな量の嗜好品を買い込んで行く。


あずきバーを15本ほど買い占めていったあのおばさんは、幼稚園の園長先生なんだろうか。




まだ不慣れな仕事ばかりなのと、寝不足だったのもあって、疲労はピークに達していた。


通り道にあったマクドナルドに吸い寄せられるように入店。


片道3キロの帰り道という果てのない砂漠に浮かぶ、ストロベリーシェイクという名のオアシス。


そのオアシスに歩み入り、足に体重をかけてみるが、どこまでいっても底がない。


直に大脳を痴女に舐め回されているかのような、震えるほどの甘さが電流となって脳に走る。


いつの間にマクドナルドはこんな麻薬を客に提供していたんだ。


おそらく食糧人類の例のチューブには、マックのストロベリーシェイクが通っているのだろう。




美味しいものなんて食えば無くなるのにバカバカしいと思う側の人間だったのだが、日に日に美味しいものの魔力に気づきゆく自分がいる。


そのせいで、一番好きな食べ物なに?と合コンで大してタイプでもない子に聞くような質問を周りの人間に投げかけることが最近のマイブームになりつつある。


しかしこの質問は意外と奥が深く、人となりが色濃く表れたりするものなのだ。


そしてさらに面白いのが、みな揃ってあまり高くないものを挙げてくるのだ。


焼きそばと答えた友人がいたが、「その焼きそばの横に1万円の大トロの握りと3万円の神戸牛ステーキが並んでいても焼きそばを食べるのか?」と尋ねると、「それはズルいわ」と言われた。


大トロと神戸牛はなにがズルいのだろうか?




ちなみに僕が一番好きな食べ物はなにかと聞かれると、コーヒーゼリーと即答する。


サラダバー付きの焼肉屋やファミレスでコーヒーゼリーが取り放題だと知った時の喜びようったら、口から音符マークを飛ばしながら店内を歩く。


メインディッシュをなににするかはまだ決めかねているが、それが和食であろうが中華であろうが、デザートはコーヒーゼリーにすると昔から決めている。


僕はコーヒーゼリーとなら心中してもいいと思えるほどコーヒーゼリーのことが好きだし、そろそろコーヒーゼリーにとって僕とはどういう存在なのかも訊いてみたい時期に差し掛かっている。




だが、こうも考えてしまうのだ。


スーパーで買って来た3個98円のコーヒーゼリーを食卓で凝視しながら、意外と悪くない人生だったなーと心静かに回顧している僕。


そこに突然世界一のパティシエが現れて、待て待て俺のショートケーキを食ってから死んでくれと迫られる。


その時に胸を張ってコーヒーゼリーを選べる自信は残念ながら今のところ、ない。


たぶん迷って迷って、ようやく答えが出そうという時にお迎えが来てしまうだろう。


だって、そんなもん、世界一のショートケーキの味を知ってから死にたい気持ちもあるに決まってるじゃんか。


ズルいズルい、そのショートケーキはズルいって。




食べ物の話になったので恥ずかしながらついでに書いておくと、昨日の晩、好きな女の子と飯を食った。


僕は本当に女の子と飯を食うのが大好きすぎて、あした突然ドラゴンボールが7個揃ったとしても、女の子と飯を食わせてくれと咄嗟にお願いすると思う。


セックスしなくていいのかって?


そんなもの子ども向けテレビアニメで流せるか。




緊張ももちろんしたが、それはもう楽しくて楽しくて、カルボナーラの味もよく覚えていない。


鼻でフッと笑える程度のギャグなら言えたりもするが、本当に僕は女の子をドキドキさせられるような甘いセリフを吐ける男ではないし、女の子を骨抜きにできるような巧みなセックステクも持ち合わせていない。


今はそんな三拍子揃った一線級の男がレギュラーとして戦っているとしても、ベンチウォーマーの僕にもいずれ必ずチャンスの順番はやってくる。


そこですぐに結果を残せるように常に準備をしておかなければ、いつまでたってもレギュラーにはなれないんだ。


いつかそんな女の子と、最後の晩餐でショートケーキとコーヒーゼリーをシェアしあいたいものである。


夢は大きいほうが、いいみたいですよ。