日雇いパンダと極楽の孔

同情するなら笹をくれ

薄水色の愛娘






新しいiPhoneが欲しい。


iPhone中毒者が、より美味しいiPhoneを手に入れようとしている。


金に糸目はつけない。


そのぶん、僕はレジ打ちを頑張るから、まだ見ぬ相棒の君も、液晶をピカピカにしておくんだよ。


お互い、一番綺麗な状態で待ち合わせよう。




相棒といえば、最近はエスピが輪をかけて可愛い。


きのう、素敵なブランコを作ってあげた。


履き古した靴下を段ボールに被せて紐を付けただけのシンプルなデザイン。


親しみやすいと思うのだが、僕の靴下が臭いのかなんなのか、かなり怯えているように見える。


まあそりゃそうか、僕だって枕元に突然巨大な遊具がドカーンと現れたら無邪気に遊ぼうにも遊べない。


エスピよ、遊びたい時が遊び時だぞ。


僕にとってもそれを見るのが遊びなのだ。




彼女との出会いは去年の9月某日。


「大きくなったら猫か小鳥を飼いたいなあー」と、子どもの頃に漠然と描いていた夢が、前触れもなくその日に突然フラッシュバックしたのだ。


それから洪水のように押し寄せてきた小鳥飼いたい欲に逆らうことができず、気づけば家から10キロ離れたホームセンターへ自転車を爆走させていた。


本当は文鳥を飼いたかったのだが、つがいしかおらず、値段も1万越えと手が出なかった。


「インコなら安いですよー」と、安めぐみ似の優しい店員さん。


見たら本当に安くて、一番に目に飛び込んできた後のエスピ、2500円。


同じ愛玩鳥で、遜色なく可愛いのに、なんでお前はそんなに安くて、あいつらよりも元気で健気で、そうだよな、一緒に見返してやろうなという気持ちだった。


ところで、オスかメスかを安さんに聞くと、「えーっとぉ…メスだとおも、いやハァン、うーん…わ、わかハァンないですぅー」と言われた。


エッチな吐息が二つ混ざっていたので許してあげた。




それから数日、ずっとつきっきりで世話をして、飼育方法もネットの隅々まで調べて、水に混ぜる2000円のビタミン剤を買って。


ずっと見知らぬおじさんがカゴの近くにいるのもストレスだろうから、目だけ離して、心は常に寄り添って。


でも鳥と人間ではあるから、すれ違うことを恐れず、だけど涙は彼女には見せずに。


結局、結局のところ、彼女は未だに僕のことを怖がっている。


たまに「かまってよー!」と鳴いてる時があるが、それで近づくと「おい!お前誰やねん!近寄んなや!」みたいな顔をする。


臭いか?ごめんって、男なんだよ。




最近、僕が「シュッ!」と言うと、高確率で会話してくれることにたまたま気づいてしまった。


条件反射か警戒してるだけの気もするが、こちらからしてみたら第一のコミュニケーションを図る手段だと捉えているので、これはもう嬉しくて仕方がない。


彼女は本当に優しくて、僕がなにかに悩んでいる時も「エスピもそう思わない?シュッ!」と話しかけると、「ピヨッ!」と賛同してくれるのだ。


たまに本気でシカトされて余計に好きになる、彼女はそのへんの女よりもはるかに男心掌握術に長けていると思う。


きっと僕に飼われなかったとしても、キャバ鳥になって成功を収めていたはずだ。




これは僕の完全なエゴなのだが、彼女は寝るのが早すぎる。


夜の9時にはもう寝ているので、夜中寂しくなった時に話しかけようとしても気が引けてしまうのだ。


でもそう考えてみると、エスピだって一人の女の子で、毎日寂しさに耐えながら歯を食いしばって眠りに就いているはずなのに。


こんな狭い鳥カゴの中ではなく、青空の下で何匹もの素敵なオスと巡り会って、たくさん卵を産み落としたかっただろうに。


寂しいのはお互い様で、僕はエスピの分まで寂しさを埋める努力をしなければいけない、そんな使命を背負っていることにようやく気づかされた。


来世はお互いもっと美しい鳥になって、でっかい巣の中で仲睦まじく暮らそう。


だからほらお前も、エサに混じった野菜、残さず食べろよ。


あっ、ブランコに乗ってるじゃん、嬉しい。


揺らしてもいいかい。


だから誰やねんお前って顔、やめろよ。